建設コンサルタント大手のパシフィックコンサルタンツ株式会
社 航空部では、国内外の空港に対して空港・航空分野に関す るすべてのサービスを提供しています。同部では、2018年1月に Transoft Solutions社の「AviPLAN」を導入し、設計部門において 活用しています。「AviPLAN」の導入経緯、活用状況、導入効果に ついて、同社交通基盤事業本部 航空部 空港保全室 主任技師 松澤晴季氏にお話を伺いました。
社会インフラサービス企業へ
パシフィックコンサルタンツ株式会社について教えてください。
パシフィックコンサルタンツグループは設立から70年以上、さまざ まな社会インフラの企画や調査、計画、設計から施工管理、維持 管理に関する技術サービスを提供してきました。私たちは、高い 技術力を備えたシビルエンジニアの集団として、社会に新たな価 値を提供しています。シビルエンジニアリングとは、市民が平和に 安心して暮らせる環境を整備する技術の総称です。
シビルエンジニアとして、互いの価値観を共有しながら、互いの 信頼関係の中で、一人ひとりが自律して行動する集団となり、社 会課題の解決に挑んでいく――それが、私たちが目指す「未来」、 私たちの掲げるビジョン「未来をプロデュースする」の実現にもつ ながると確信しています。
パシフィックコンサルタンツ 交通基盤事業本部 航空部の業務について教えてください。
建設コンサルタントでも航空分野に対応できる会社は多くありま せん。当社はその中の1社で、計画系の政策に近い上流業務から 現場に近いハードウェア系の下流の業務まで、バランスよく担当し ています。クライアントである空港は、国内の空港はもとより海外 の空港からの依頼にも対応しています。
社内外の技術力を結集して、国内外の航空・空港分野のプロジェ クトを牽引する航空部では、空港・航空分野に関するすべてのサ ービスを提供しています。空港利用促進や航空物流調査、需要予 測、航空空域調査などの企画・調査、空港及び周辺の開発計画、 空港土木施設の設計、耐震設計、施設管理、維持管理、そして空 港運営の支援までを行っています。現在、国は民活空港運営法に 基づき、滑走路等の航空系事業とターミナルビル等の非航空系 事業について、民間による一体経営の実現を進め、地域活性化を も図っていく考えです。この法に基づき、当社も複数の空港で空 港運営を支援しています。
こうした業務の中で、私が担当しているのは設計になります。
空港がアップデートしていくために必要となる設計
航空・空港分野で、どのような内容の設計に携っ ているのですか。
主に空港土木施設の設計に携っています。例えば日本の航空・空 港分野は国際基準を基にした国内基準に準拠しています。国際 基準が変更になった場合、それに合わせて国内基準も見直され、 必要に応じて空港施設の改修を行います。また、航空需要の増加 に伴い、空港の限られたスペースをより効率的に使用するため、 誘導路の形状を変更や、駐機場(エプロン)の駐機位置(スポッ ト)配置を見直す検討・設計等も行っています。
現在、設計への依頼はどのような内容が多いの ですか。
空港の維持管理に関わる設計が多いですね。高速道路リニュー アルの広告や告知がテレビやWebサイトで頻繁に見られますが、 空港も同じです。航空機は荷重がとんでもない大きさなので、滑 走路や誘導路はとても痛みやすく、ひび割れや轍ができているこ とがあります。その補修設計の依頼はかなり多くあり、空港がアッ プデートしていくために必要となる設計が多く依頼される傾向に あります。
実際の航空機の走行軌跡などを踏まえて設計できる
パシフィックコンサルタンツでは、2018年に1月Transoft Solutions社の「AviPLAN Turn Pro」(以下「AviPLAN」)を導入され、現在もお使いです。設計のどのような場面で活用さ れるのですか。
最近の例をいくつかお伝えします。
1. エプロンのスポット配置の検討
将来就航する機材に合わせた駐機位置の見直しや、スポットイ ン/アウトの軌跡を踏まえたエプロン範囲の最適化の検証、設計 に活用しています。「AviPLAN」を使えば、航空機の大きさはもち ろん、航空機の動線と必要最小限の離隔を可視化できるため、 対象空港における最適なスポット配置を提案することも可能にな ります。
2. 誘導路の曲線部(フィレット)の検討
誘導路のフィレット形状の舗装範囲の検討に活用しています。航 空機は中心のラインに沿って走りますが、そのラインで走るのは ノーズギアです。メインギアの走行ラインは、単にノーズギアのラ インを平行移動すればいいわけではなく、少し膨らませる必要が あります。「AviPLAN」を使えば、走行軌跡を適確に描くことがで き、車輪がどこを通り、どこまで来るのかが明確にわかり、舗装 が必要な範囲もわかります。つまり「AviPLAN」を使って走行軌跡 を検証することで、効率的な走行軌跡が把握できますので、舗装 の範囲を節約できるといった効果もあります。
他には、ターミナルビルに隣接したエプロンで、航空機がスポッ トに入るためのフィレット形状の検討に活用しています。航空機 はトーイングトラクターをつけて、押してバックしてエプロンに入 る場合があります。トーイングトラクターをつけた場合の航空機 のカーブの通り方は独特の動きをします。「AviPLAN」を使えば、 そうした独特な走行軌跡を踏まえた上でのフィレッ形状の設計も 可能です。
3. ブラスト影響範囲の検証
航空機がエプロンから出入りするとき、「AviPLAN」はブラストの 影響範囲を描画してくれます。ブラストの影響範囲が明確にわか ることで、ブラストフェンスの必要性の精査が可能になりました。 また、トーイングトラクターで引っ張り、ある位置まで来てエンジ ンをふかせば、後方に影響がないのでブラストフェンスは不用と いった判断もできます。
そしてブラストの影響範囲を確認できることで、基本施設近傍の 工事可能範囲の精査が可能になりました。ある場所を工事する と、近くの経路が埋まってしまうので、こちら側から通ってもらう。 あるいは新しい経路を作るといった検討が可能になります、そし てブラストの影響範囲がわかるので、工事の際、人が入ってはい けない場所も明確に示すことができます。
若手がクライアント出向中に「AviPLAN」を知る
「AviPLAN」を導入される前、設計業務はどのように行っていたのですか。
走行軌跡の検討では、社内の人がExcelで自作したプログラムが
ありました。私たちも使うことはできますが、プログラムのアップ デートをすることはできませんので、誰でも使える環境にはあり ませんでした。
航空機に関してはメーカーのWebサイトから資料をダウンロード し、PDFから機体を切り抜いて、CADの図面上に置いて、この翼は どれくらいの長さかをスペック表から一生懸命読み取って、CAD に再現していたのです。
「AviPLAN」に似たソフトウエアの存在は知っていました。ただ、 走行軌跡の検討は協力会社に委託することも多く、若手のころは 走行軌跡の作成条件や精度に関する知識を得られる環境が限ら れており、逐一上司に確認したり、一つ一つの条件の出どころを 調べたり、検証に時間がかかっていました。同様に検証結果は報 告書にまとめて、クライアントに提出しますが、その際、この線の
根拠を知りたい、とクライアントに言われても、その場で的確な
返答ができずに、都度持ち帰って確認をしてからの返答となって いました。
そのソフトウエアについての検討も行いました。データの更新は 時々あるようでしたが、そこまで自由度はありません。例えば走行 軌跡は出せますが、それはノーズギアのラインで、メインギアのラ インや、離隔に関しては手作業で引く必要がありました。それを内 部に導入しても、作業効率化がそれほど上がらないため、もった いないという意見で導入しませんでした。
ただ、クライアントに対しての説明責任は当社にありますので、そ のままではいけない、何かないのかという思いはありました。
「AviPLAN」を知ったきっかけを教えてください。
当時、クライアントに私たちの部署の若手が出向する機会があり ました。そのクライアントでは「AviPLAN TurnPro」を活用してお り、出向した若手は「AviPLAN」に触れる機会があり、結構使い やすいという情報を教えてくれました。
そこで導入を検討し、試してみたところ、使い勝手がよく、当時困 っていた走行軌跡の検証などをしやすかったことから、導入する ことになりました。またクライアントでも活用していることから、
「AviPLAN」を使ってほしいという声もありました。
より効率的に検証でき、設計制度も向上
「AviPLAN」の評価を教えてください。
1. 豊富なライブラリ
ライブラリには非常に豊富な機材のCADデータが納められていま す。あらゆるメーカーの航空機の平面図と、現行機材であれば、 立面図、正面図、側面図が入っています。現行機種だけでなく、昔 の機材や日本には就航していない機材のCADデータも入っていま す。海外の案件で、日本に未就航の機材を提示されても、指定の 機材で設計図を簡単に起こせるので、クライアントの声に応える ことができ、非常に便利です。また、同じ機材でも、出力の違うも のなども納められています。
空港内には特殊な車両がたくさんありますが、それらも一通りラ イブラリに納められています。例えば階段付きの車両を機体につ けて、乗客は下に降りてバスでターミナルに帰るといったシミュレ ーションも可能です。
実際に航空機のCADデータを自分で入手するのは大変です。メー カーのWebサイトに載っていればラッキーで、基本的に載ってい ないことがほとんどです。そうなるとメーカーへメールで依頼をす ることになり、かなり手間がかかっていました。
2. 見た目で理解しやすい
航空内に機体などを配した図面をクライアントに見せることで、 見た目で非常に理解してもらいやすく、当社としては伝えやすいと 考えています。文字だけの報告書を書くよりも、1枚の図面を見て もらう方がずっとわかりやすいと思います。
設計や報告書をまとめる作業自体も「AviPLAN」を活用すること で効率化できます。資料作成でもCADで設計して確認したもの を、そのまま資料にすれば良いので、非常に作業が簡素化できて
います。クライアントの空港管理者に提供してもらった平面図に、
航空機を置いて走らせて検証したものを成果物として提出するこ ともできます。クライアントはベースとなる空港の平面図は見慣れ ています。そこに飛行機が実際に入っている設計図をお見せする と、非常になじみやすいようでした。エプロンに航空機を置いて みると、ギリギリがどうかも明確にわかりますし、検証できますの で、大変便利に活用しています。
3. より効率的で精度を高められる
以前は設計要領をもとに曲線を描いていましたが、実際に AviPLAN」を活用して使用されている機体を使ってシミュレーショ ンができますので、より効率的にできますし、設計精度が向上し ています。
以前はマニュアル的に描くのみで 、それをさらに効率的にしていく 選択肢はありませんでした。クライアントにも技術専門の方は少 数ですので、きちんと検証した提案ができることが望ましく、検証 と設計を効率化でき、精度を高められることは大きな効果と感じ ています。
3Dでのシミュレーションや設計にも挑戦してみたい
「AviPLAN」の今後の活用予定を教えてください。
まだ完全に使いこなしている状況ではありませんので、まずはす べての機能を使えるようになりたいと考えています。「AviPLAN」 は3Dにも対応していますが、いまはまだ平面上での機能しか使い こなせていません。ぜひ3Dでのシミュレーションや設計にチャレ ンジしてみたいと思います。
「AviPLAN」並びにTransoft Solutions社へのリクエスト、機体などありましたらお教えください。
ライブラリは新しい航空機が出たらすぐにアップデートしてくれま
すし、オリジナルの機材をリクエストして追加してもらえるサービ スもあります。以前は新しい航空機が出るたびに、自分でメーカー のWebサイトを確認して情報を集めていました。そうした手間が 省けるだけでも、ずいぶんと助かります。
また、ライブラリに収録されているトーイングトラクターなどは種
類が多すぎるためか、海外メーカーのものがほとんどです。国内 の空港では日本メーカーのトーイングトラクターやボーディング ブリッジなども使われています。日本メーカーの機材もライブラリ に入れていただけると助かります。今後ともタイムリーなアップデ ートに期待しています。
パシフィックコンサルタンツ様、お忙しい中、貴重なお話をお聞かせいただきありがとうございました。


